片頭痛の新しい予防薬「ビエプチ」とは? 12週間に1回の点滴治療について専門医が解説
頭痛
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2026年9月、片頭痛の新しい予防薬「ビエプチ点滴静注100mg(一般名:エプチネズマブ)」が日本で製造販売承認されました。
ビエプチは、12週間に1回の点滴によって片頭痛の発作を予防する、抗CGRP抗体製剤です。
これまで日本で使用されてきた片頭痛の抗CGRP抗体製剤は皮下注射でしたが、ビエプチは点滴で投与するという特徴があります。
「毎月のように片頭痛で仕事や家事に支障が出ている」
「頭痛薬を飲む回数が増えてきた」
「これまでの予防薬では十分な効果が得られなかった」
このような方にとって、新たな治療選択肢となる可能性があります。
今回は、ビエプチの特徴や効果、従来の片頭痛予防注射との違いについて、脳神経内科専門医が解説します。(日本医事新報社)
※2026年9月24日時点の情報です。ビエプチは国内で製造販売承認されていますが、現時点では販売開始前です。
ビエプチとは? 片頭痛の原因に関わるCGRPを抑える薬
片頭痛の発症には、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質が深く関わっています。
CGRPは神経から放出される物質で、片頭痛の発作時には、その働きによって痛みの情報が伝わりやすくなると考えられています。
ビエプチは、このCGRPに直接結合して働きを抑える「抗CGRP抗体製剤」です。
CGRPの働きを抑えることで、片頭痛の発作が起こる回数を減らす効果が期待できます。
ビエプチは、すでに起きている頭痛をその場で改善する薬ではなく、片頭痛の発作を予防するための薬です。
そのため、ビエプチを使用している間も片頭痛発作が起きた場合には、必要に応じてトリプタン製剤などの急性期治療薬を使用します。(PMDA)
ビエプチの特徴は「12週間に1回の点滴治療」
ビエプチは、通常、成人に100mgを12週間隔で点滴静脈内注射します。
1回の点滴にかかる時間は約30分です。
これまでの抗CGRP抗体製剤は皮下注射で投与するタイプでしたが、ビエプチは医療機関で点滴を受ける治療となります。
従来の片頭痛予防注射との違い
現在、日本で使用されている主な抗CGRP関連抗体製剤とビエプチの違いをまとめました。
薬剤名 | 一般名 | 投与方法 | 投与間隔 |
|---|---|---|---|
エムガルティ | ガルカネズマブ | 皮下注射 | 4週間に1回 |
アジョビ | フレマネズマブ | 皮下注射 | 4週間に1回、または12週間に1回 |
アイモビーグ | エレヌマブ | 皮下注射 | 4週間に1回 |
ビエプチ | エプチネズマブ | 点滴静注 | 12週間に1回 |
ビエプチの特徴は、12週間に1回、医療機関で点滴を受けることで治療を継続できることです。
ただし、アジョビにも12週間に1回の投与方法があります。そのため、ビエプチだけが3か月に1回の治療というわけではありません。
また、点滴治療であることが、皮下注射よりも高い予防効果を意味するわけではありません。
それぞれの薬剤には特徴があり、これまでの治療歴や頭痛の頻度、通院のしやすさなどを考慮して選択します。(PMDA)
ビエプチにはどのくらいの効果がある?
ビエプチの有効性は、日本人を含む慢性片頭痛患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験「SUNRISE試験」で検証されています。
慢性片頭痛とは、3か月を超えて月15日以上の頭痛があり、そのうち月8日以上に片頭痛の特徴を持つ頭痛が認められる状態です。
SUNRISE試験では、成人の慢性片頭痛患者978人を対象に、ビエプチまたはプラセボ(有効成分を含まない偽薬)を投与し、片頭痛が起きた日数の変化を比較しました。
片頭痛が起きる日数が減少
ビエプチ100mgを投与したグループでは、投与前に平均して月17.6日程度あった片頭痛の日数が、投与後1~12週間で平均7.18日減少しました。
一方、プラセボ群でも平均4.78日の減少が認められました。
ビエプチ100mg群では、プラセボ群と比較して月間片頭痛日数が平均2.39日多く減少し、統計学的に有意な差が確認されました。
この結果から、ビエプチには慢性片頭痛の発作を予防する効果があることが示されています。
ただし、効果には個人差があり、すべての患者さんで片頭痛がなくなるわけではありません。
投与後、早い段階から効果が期待できる
ビエプチは点滴によって薬剤を直接血液中に投与するため、投与終了時には血中濃度が高くなります。
海外の臨床試験では、投与後24時間以内の片頭痛発作の発現についても検討され、投与後早期から予防効果が認められています。
ただし、投与直後から必ず頭痛が改善するという意味ではありません。
また、すでに起きている片頭痛発作を止める目的では使用できません。
治療を開始した後も頭痛の頻度や程度を記録し、効果を確認しながら継続することが重要です。(PMDA)
ビエプチはどのような人が対象になる?
ビエプチの効能・効果は「片頭痛発作の発症抑制」です。
添付文書では、前兆のある片頭痛または前兆のない片頭痛が月に複数回以上起きている方、あるいは慢性片頭痛の方について、治療の適用を検討するとされています。
また、生活習慣の改善などの非薬物療法や、片頭痛発作に対する急性期治療を適切に行っても、日常生活に支障がある患者さんが対象となります。(PMDA)
例えば、次のような方では予防治療を検討することがあります。
片頭痛のために仕事や学校を休むことがある
月に何度も頭痛が起こり、日常生活に支障が出ている
頭痛薬を使用する日が増えてきた
頭痛が長引き、急性期治療薬だけでは十分に対応できない
これまでの片頭痛予防薬で十分な効果が得られなかった
ただし、これらに当てはまる方すべてがビエプチの投与対象になるわけではありません。
頭痛の診断やこれまでの治療歴などを確認したうえで、予防治療の必要性や適切な薬剤を判断します。
また、片頭痛の予防治療には内服薬やほかの抗CGRP関連抗体製剤など、複数の選択肢があります。
片頭痛の頻度が増えてきた場合には、ビエプチに限らず、予防治療全体について脳神経内科で相談することが大切です。
ビエプチの副作用や注意点は?
ビエプチで注意が必要な副作用には、過敏症反応や点滴に伴う反応があります。
日本人を含むSUNRISE試験のビエプチ100mg群では、副作用が9.2%に認められました。
主な副作用は、過敏症反応(3.4%)や点滴に伴う反応(1.2%)でした。
また、重篤な過敏症反応として、アナフィラキシーが起こる可能性があります。
点滴中や投与後に、息苦しさ、じんましん、顔や喉の腫れ、血圧低下などの症状が出た場合には、速やかな対応が必要です。
そのほか、臨床試験や海外での使用において重篤な便秘も報告されており、特に便秘のある方や腸の動きが低下している方では注意が必要です。
妊娠中や授乳中の方についても、投与の必要性を慎重に判断します。(PMDA)
ビエプチの治療効果はいつ判断する?
ビエプチは、1回投与して頭痛が完全になくならなかったからといって、すぐに治療が無効と判断するわけではありません。
日本の添付文書では、投与開始後6か月を目安に治療上の有益性を評価し、症状の改善が認められない場合には投与中止を検討するとされています。
治療中は、頭痛が起きた日数だけでなく、痛みの強さや急性期治療薬の使用回数、日常生活への支障なども確認します。
効果が得られている場合も、定期的に治療継続の必要性を検討します。(PMDA)
ビエプチの費用は? いつから治療を受けられる?
ビエプチは2026年9月16日に日本で製造販売承認されましたが、9月24日時点では販売開始前です。
そのため、現時点では具体的な治療費や、一般の医療機関で治療を受けられる時期については確定していません。
今後、薬価収載や販売開始などの情報が明らかになれば、治療にかかる費用についても確認できるようになります。(日本医事新報社)
片頭痛でお困りの方は、脳神経内科へご相談ください
片頭痛は、痛みが出たときに薬を飲むだけでなく、発作が起こる回数を減らすための予防治療も重要です。
ビエプチの登場により、片頭痛の予防治療に新たな選択肢が加わりました。
一方で、現在使用できる予防薬にも複数の種類があり、患者さんの頭痛の頻度や程度、これまでの治療歴などによって適切な治療は異なります。
リベ大クリニック名古屋院では、脳神経内科専門医が頭痛の診察を行い、必要に応じて片頭痛の予防治療をご提案しています。
「頭痛の回数を減らしたい」「今の治療で十分な効果が得られていない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
※ビエプチについては、2026年9月24日時点では販売開始前のため、当院での投与は行っておりません。今後の取り扱いについては、販売開始後の状況を踏まえてご案内いたします。
当院では、日本神経学会神経内科専門医・指導医が頭痛の診療を行っています。
片頭痛、緊張型頭痛、複数の特徴が混在する頭痛などについて、症状や経過を確認しながら必要な検査・治療を検討します。
内科・脳神経内科 【診療時間】
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参考文献・資料
PMDA. ビエプチ点滴静注100mg 添付文書(2026年9月作成、第1版)
添付文書はこちらSUNRISE試験:日本人を含む慢性片頭痛患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験。試験結果はビエプチ添付文書の臨床成績に記載。
PROMISE-1試験・PROMISE-2試験:反復性片頭痛および慢性片頭痛患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験。試験結果はビエプチ添付文書の臨床成績に記載。
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